あけましておめでとうございます。
年末から年始にかけて風邪をひいていました。
結構熱が出てしまいまして、その時に見た悪夢を参考に書いてみました。
(ある程度イイネが貰えそうでしたら挿絵も作ろうと思います。)
<事前知識>
■女中(15~30才)
主君や奥方、姫君の身の回りの世話をする侍女。礼儀作法や家事、時には武芸の心得も求められる。
■小娘( 7~14才)
女中見習いとして働きながら礼儀作法や家事を学ぶ。まだ幼いため、主に軽作業や雑用を任されることが多い。
【第一章:敗北の代償】
突然の奇襲。
城下町はたちまち火の海と化し、城は瞬く間に陥落。
戦火を免れ捕縛された私たちに求められたのは潔い自決。
男には切腹、年増や老女には喉刺しを命じ短刀が渡された。
しかし、私たち女中や見習いの小娘に渡されたのは、西洋の浣腸器だった。
「ぐぅ…無念……」
ドサッ
最後の男がその場に崩れ落ち、残されたのは私たち女中だけとなった。
その中には、まだ幼さの残る小娘の姿も混じっている。
「次っ!!」
敵将の家臣の声が鋭く響く。
私は震える手を膝に置き、浣腸器という金属装飾が施された西洋の異様な器具をじっと見つめていた。
噂では、お尻に空気や液体を無理やり送り込むための道具だという。
革製の膨らみを手で握ると、細長い管を通じて空気や液体が送り出される仕組みらしい。
そのとき、1人の女中がゆっくりと前に進み出る。
「これで…私らに何をさせるおつもりですか?」
敵将の家臣は微かに笑みを浮かべ冷たく言い放つ。
「言われなくても分かるだろう。お前たちに残された道は1つだけだ。」
「じ、自分の…腹に…空気を…いれろと?」
震える声で誰かがつぶやいた。
家臣の冷たい視線はその声に応えるこはなく無言で刺さるような威圧を放つ。
その目には情けも哀れみもない。
冷酷な笑みだけがそこにあった。
沈黙の中、前に出ていた女中が静かに下がる。
そして、覚悟を決めたように帯に手をかけた。
その動作を皮切りに他の女中や小娘たも次々と帯を緩めていく。
もちろん、私も。
すすり泣く声ががあちこちから響く。
帯を緩めた私は目の前に置かれた浣腸器にそっと手を伸ばした。
冷たい金属の装飾が指先に触れた瞬間、息が詰まりそうな恐怖が身体を支配する。
「くっ…」
女中のひとりが小さく声を漏らした。
振り返るとその背中が小刻みに震えている。
どうやら浣腸器の管を尻に挿入したようだ。
「ひぃっ」
「くふっ!?」
「いや…っ!」
すすり泣きに混じって女中や小娘たちの小さな悲鳴が響く。
恐怖に引きずられるように私も手にした浣腸器の管をそっと尻に当てた。
ヌプッ
「うっ!」
私も思わず声が漏れた。
ムズムズとした初めての感覚が尻から背筋を駆け上がり全身に鳥肌を立てる。
視界が歪み涙がこぼれそうになり私は奥歯を噛みしめた。
コトッ
唐突に目の前置かれた茶碗が私たちの視線を奪う。
山盛りに入った白く濁った液体。
それが米を溶かして作られた糊だと気づくまで、少し時間がかかった。
「それで尻の穴を塞ぎ残りを全て飲め。」
家臣から発せられた言葉に私たちの動きがピタリと止まる。
私は震える手で糊を手に取った。
冷えたぬるりとした感触が指先に絡みつく。
「も、もう…やるしかない……」
心の中でそう呟き私はお尻に糊を塗りつけた。
冷たい粘り気が肌に染み込むように広がる。
糊が固まればもう浣腸器は外れない。
続いて茶碗を持ち上げ口に運ぶ。
「うぶっ…ぐぅ…っ!」
鼻腔をつく米糊独特の生臭い匂いに思わず息が詰まる。
喉を通る感触は、まるで泥が喉にこびりつきながら落ちていくようだった。
「うっ、げぷっ…げぇっ……」
全て飲み干した瞬間、胃が痙攣し、酷い吐き気が込み上げる。
しかし、喉の奥でせき止められたように何も出てこない。
まるで米糊の強い粘り気が胃に蓋をして、出口を完全に塞いでいるかのようだ。
胸を強く締め付ける絶望感。
抵抗しても意味はない。
この場から逃げる術はもうどこにもなかった。
タイヨーエネマシリンジNEO
【第二章:千代】
私たちは正座のまま、静寂に包まれた空間でその時を待っていた。
蝋燭の揺れる明かりが床を不気味に照らし、影が揺れるたびに胸の鼓動が早まる。
自分の呼吸音すら重苦しい。
手のひらはじっとりと汗で湿り、握りしめた拳がわずかに震えていた。
「始め!!」
家臣の鋭い号令が響く。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
至る所からポンプを握る音が響き渡る。
「ひっ…いやぁ……」
また、思わず声が漏れた。
冷えた空気が体内に入るたびに徐々にお腹が張り詰めていく。
皮膚を引き伸ばし内臓が押し広げられるような痛みに身体が震える。
「うぅ、酷い…なぜこんな……」
「や、やだ…これ以上無理…っ!」
「痛いっ!お腹痛いぃっ!」
部屋中に苦しげな声が響く。
女中や小娘たちは顔を苦痛に歪め荒い息とともに涙を流している。
身体の小さな小娘たちは、既に懐妊したように腹を膨らませ異様な光景となっていた。
「そこ!手を動かせ!!」
バシンッ!!!
乾いた鞭の音が響く。
「ひぃっ!!お許しをっ!!」
シュコッシュコッ シュコッシュコッ シュコッシュコッ
女中の泣き叫ぶ声に続いてポンプを握る音聞こえてきた。
少しでも手の動きを緩めれば家臣が容赦なく鞭を振り下ろす。
空気でどれだけ腹が膨れ上がっても私たちは手を止めることを許されない。
恐らくこのお腹が限界を超え身体が壊れるまで。
「お姉様…も、もう…入りません……」
妹の千代(ちよ)が涙を浮かべ訴える。
懐妊した妊婦のような腹を抱え、震える手で必死にポンプを握り続けていた。
「千代…頑張って…っ!」
私には千代を励ますことしかできない。
「ご、ごめん…なさい…もう千代は……」
顔は青ざめ、額に汗を滲ませる千代。
耐え難い苦痛が波のように次々と押し寄せているのが、その歪んだ表情からひしひしと伝わってくる。
まだ幼いその身体には、あまりにも過酷な責め苦だ。
シュコッ……シュコッ……
千代のポンプを握る手が遅くなる。
「千代、もっと早く動かして。」
「い、いや…もう、お腹…いやぁっ!」
女中見習いとして、いつも健気努めていた千代が、人前で初めて泣きじゃくった。
「そこ!手を止めるな!」
家臣が叫ぶと私たちへ近づく。
私は千代の肩を掴み思わず声を張り上げた。
「手を動かして!!千代!!」
「やだぁやだああぁっ!!」
しかし、千代は泣き叫ぶばかりで私の言葉がまるで届かない。
バシンッ!!!
「いぎゃぁっ!」
千代が大きな悲鳴を上げる。
家臣の振った硬い鞭が、千代の柔らかい肌を引き裂き血が滲む。
「早く手を動かせ!!」
家臣の怒号が響く。
シュコッ……シュコッ……
千代の震える手が再び動き始めた。
しかし、明らかに動きは遅く力が入っていない。
「千代、もっと早く。」
「……ぃ…お姉様…だ…だい…きらい……」
その言葉が私の胸に深く突き刺さる。
両親を失ってから私と千代は2人で支え合い生きてきた。
私が女中の道を選んだのも千代に貧しい思いをさせたくなかったからだ。
しかし、見習い中は合うことも許されずどれだけ寂しい思いをさせたか分からない。
他にも何度も辛い思いをさせ、我慢してきた千代に「嫌い」と言われたのは今が初めてだった。
シュコッ……シュコッ……
「ううっ…うぐぅ…くるしぃよぉ……」
千代の苦しげな声が私の胸を締め付ける。
まだ幼さを残すその顔は涙で濡れ、痛みと屈辱に酷く歪む。
腹はお産を控えた妊婦のように異様に膨れ上がり、張り詰めた皮膚は赤く腫れ、今にも張り裂けそうだ。
「こんなことになるなら…私が女中になんてならなければ。」
後悔と罪悪感が渦巻く。
千代の痛々しい姿が瞼に焼き付き、どう足掻いても逃れられない現実が私を蝕む。
「くるしぃ…はいらない……」
「い、いたい…いたいっ…たす…けて……」
「も、もう…ゆるして……」
他の小娘たちの助けを乞う悲痛な声が部屋中にこだまする。
身体が小さい分、彼女たちは大人の女中たちよりも先に限界を迎えているようだった。
「がんばりな…お雪…がんばりな……」
「いい子だから…耐えて……」
「踏ん張って…もっと歯を食い締めろ……」
近くの小娘を励ましながら、無理やりポンプを握らせる女中たち。
小娘たちは涙を流しながら女中の言葉を信じてポンプを握り続ける。
体格に不釣り合いなほど大きく膨らんだお腹はこれまで小娘たちに強いてきた無理の積み重ねだ。
「おい!手を動かせ!!」
バシンッ!!!
「ぎゃあ!!」
また千代が悲鳴を上げる。
「千代!千代!大丈夫!?」
お腹を抱え前に倒れ込むように床に伏せた千代に呼びかける。
「も、もう…むり……」
泣きながらか細い声で千代が呟く。
「動かせと言っているだろう!!」
家臣が千代に向け再び鞭を振り上げる。
「ま、待って!」
咄嗟に私は千代のポンプを握り自分のポンプと一緒に動かし始めた。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「ほら、これならいいでしょ?もう叩かないで!」
家臣の冷たい視線が私に向く。
そして、何も言わず鞭を下ろすとその場を離れていった。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「い…いや…お…姉様…お腹…はぜ…ぢゃ…ぅ……」
千代のお腹がググッと前に突き出し皮膚が強く張ってきた。
私は苦痛で跳ね上がる千代の身体を抱き寄せポンプを動かし続ける。
頬に涙が伝う。
私が手を止めても千代の苦痛が長引くだけ。
ここにいるみんなの行き着く先は同じ。
ならせめて先に千代だけでも早く楽にしてあげたい。
「うぐっ…むりっ……」
「ぁ…こわ…れるっ…いや…あ……」
「うぐっ…あぁ…っ!」
周囲から小娘たちの苦痛に満ちた呻き声が響く。
他の女中も私を真似て側にいる小娘のポンプを握っていた。
昨日まではじけるような笑顔で働いていた小娘たちの苦痛に歪んむ表情が視界に入る。
「ど、どうして…こんなことに…」
もうあの笑顔は二度見れられない。
行き場のない怒りと悲しみが胸に押し寄せ、自分の無力さに嫌気が差した。
ポンッ!!!
「ぎゃぁっ!!」
軽い破裂音と共に小娘の短い悲鳴が空間にこだまする。
私は反射的に音にした方を向いた。
目に入ったのは膨れ上がった腹を両手で押さえて前に倒れ込むように床に伏せる小娘の姿。
プルプルと痙攣する小娘の身体。
彼女の手の隙間から血が溢れ出し床を赤く染めていく。
「そんな…っ!?」
あまりの光景に言葉が詰まる。
頭では理解していた。
しかし、実際に惨状を目の当たりにすると全身が凍りつき息をするのも忘れる。
嫌な汗が背中を伝った。
このままでは千代も――
「こらそこ!!」
バシンッ!!!
「痛いっ!!」
鞭の鋭い痛みに思わず声を張り上げた。
焼け付くような痛みが徐々に広がっていく。
「早く手を動かせ!!」
家臣の怒鳴り声が耳元で響く。
私は震える手で再びポンプを握りしめた。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「だ…めぇ…やめ…てぇ…っ……」
千代の冷たい手が私の腕を強く掴む。
「ち、千代…い…いい子…に…なる…から……」
途切れ途切れに言葉を紡ぐ千代。
もう限界が近い。
「もう少し、もう少しの我慢だよ。千代。」
私は千代の頭を撫でると強く抱きしめた。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ シュコッシュコッ
腕の中で千代の身体が激しく震える。
シュコッ……
「ち、千代…?」
ポンッ!!!
「ぶっ!!」
千代が短い悲鳴を挙げる。
「千代!!千代!!」
ビクビクと痙攣する千代の身体。
千代の両手は大きく膨れ上がったお腹を押さえている。
指の隙間からゆっくりと赤黒い血が滲み出してきた。
「ごめんなさい!ごめんなさい千代!!」
私は涙を流しながら叫ぶ。
姉として何も出来ないまま唐突に訪れた永遠の別れ。
守るべきはずの小さな身体が、徐々に壊れていくのを私はただ見つめることしか出来ない。
「…ね…さ…ま……」
「千代…?」
千代が唇を震わせか細い声で呟く。
「あり…が…ぅ………」
言い切る前に唇が動かなくなり、千代の身体が私の腕の中で崩れるように力を失った。
「えっ、そんな…そんな私…何も…千代おぉ!!」
私はまだ暖かい千代の身体を強く抱いて再び泣き叫んだ。
バシンッ!!!
「痛いぃ!!」
背中に焼け付くような激痛に思わず声を上げる。
振り返ると家臣が鞭を振り上げていた。
バシンッ!!!
「痛い!!やめて!!叩かないで!!」
「早く手を動かせ!!」
怒鳴り声が耳元に響く。
私は千代をそっと床に寝かせ、涙を拭う間もなく自分のお尻に繋がったポンプを握りしめた。
動かなくなった千代を抱いた感触がまだ私の腕に残っている。
「千代、安心して。お姉様もすぐ行くから。」
シュコッシュコッ シュコッシュコッ シュコッシュコッ
私は手を動かし始めた。
【第三章:束の間の休息】
ポンッ!!!
「あがっ!!」
ポンッ!!!
「うぐっ!!」
ポンッ!!!
「うぅっ!!」
耐えきれなくなった小娘から順番にお腹を抱えて前に倒れ込むように床に伏せていく。
浣腸器を使った自決は切腹とは異なり、お腹の中身が剥き出しになる。
次第に血生臭さだけに留まらない嫌な臭いが鼻を突くようになってきた。
息をするたびに吐き気がこみ上げる。
「なんだ、この臭いはっ!?」
気分を悪くした家臣はしかめ面をすると逃げるように部屋を後にした。
扉が閉まる音が響く。
一瞬、部屋が静寂に包まれる。
「……っ、はぁ……はぁ……」
私は握りしめていたポンプをそっと手放し、震える手でお腹を摩った。
私自身も驚くほどに大きく膨らんだお腹。
比較的、大食いな方だがこれほどのお腹になったことは生まれて此の方一度もない。
「うくっ…苦しぃっ…」
張り詰めた皮膚の感触。
最初に飲んだ米糊が胃に蓋をしているのでゲップ1つ出てこない。
内側から押し広げられるような強い圧迫感に思わず顔が歪む。
楽な姿勢を探そうと背中を丸めたり伸ばしてもお腹が苦しいのは変わらない。
むしろ、下手に身体を動かすと注入した空気が身体の中を別の生き物のように動き回り新たな苦痛が波のように押し寄せる。
周囲を見渡すと他の女や小娘たちもその場を動かず身体を前のめりにして床に伏せていた。
「はっ…くぅ…っ!」
私の隣で小娘のひとりがお腹を押さえながら呻いている。
シュコッ……シュコッ……
側にいる女中がその小娘のポンプをゆっくりと動かし続けていた。
小娘ははち切れそうなお腹を抱えて空気を受け入れて続けている。
「あ、あの。」
私は女中に声をかけた。
「関わらないで。」
女中は一言呟くとポンプの操作を続ける。
恍惚とした表情。
まるでワザと少女を苦しませ娯楽のように楽しんでいるかのようだ。
シュコッ……シュコッ……
「がっ…あぁっ…と…とめ…で…え…っ!」
苦痛に喘ぐ小娘。
少しずつゆっくりと膨れて大きくなる小娘の腹。
余りに遅いポンプの操作が小娘の苦しみを一層長引かせている。
シュコッ……シュコッ……
「はぁ、はぁ……っ!?」
小娘と目が合った。
「だず…だずげてえ!!」
藁をも掴む勢いでこちらに手を伸ばす小娘。
「やめてっ!」
私は思わず女中の手からポンプを奪い取った。
その瞬間、女中の目が鋭く光り私を睨む。
「ちっ…」
女中はこちらに聞こえるほど大きな舌打ちをするとそっぽを向いた。
「むりぃ、お腹…こわれぢゃうぅ…っ!」
身体を跳ね上げ苦痛を訴える小娘。
助けようとしたものの、私には彼女の苦しみを和らげる術が何一つなかった。
小さな身体からは想像もつかないほどお腹が膨れ上がり、張り詰めた皮膚は限界まで緊張している。
私はこれ以上お腹が膨張しないように手で強く圧迫した。
驚くほど硬い感触が手のひらに伝わる。
中身は空気だけのはずなのに、まるで石が詰まっているかのようだ。
「落ち着いて!深呼吸して!」
私は必死に声をかけるが、小娘は首を振り続けるばかりで、こちらの言葉を受け入れる余裕などまるでない。
小娘の身体は無理な体勢で捻じれており、もし私が圧迫を止めたら、その瞬間にお腹が裂けそうだ。
「……っ!」
扉の向こうから近づく足音。
「も、戻ってくる……っ!」
誰かの発したこの言葉で部屋全体の緊張感が一気に高まる。
私は急いでポンプを小娘に握らせお腹を強く圧迫させた。
「頑張って動かして!見つかったら鞭で……」
扉が勢いよく開く。
「お前ら続きをしろ!!」
口と鼻に手拭いを巻いた家臣が部屋に戻ってきた。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
また至る所からポンプを握る音が響き渡る。
私も自分のお尻に繋がったポンプを拾うと必死に手を動かし始めた。
しかし、私の隣の小娘はポンプを床に落としお腹を両手で押さえて呻いている。
「がっ…ぐぅっ…た、たずげ…っ!」
声は掠れて息も途切れ途切れだ。
もうこの小娘に自分の力でポンプを動かす力はない。
気づいた家臣の冷たい視線が私に突き刺さる。
無言の圧力に全身が凍りつく。
私は慌てて隣の小娘のポンプを拾い上げ意を決して動かし始めた。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「…がっ…ぐえぇっ……」
小娘が汚い嗚咽を響かせ始めた。
ポンッ!!!
「ぐぎゃ!!」
他の場所でまた一人の小娘がお腹を抱えて前に倒れ込むように床に伏せた。
激しく身体を痙攣させ床に血溜まりを広げていく。
ポンッ!!!
「ぐあ!!」
ポンッ!!!
「ひぎ!!」
他の小娘たちも順番にお腹を抱えて前に倒れ込むように床に伏せていく。
もう残った小娘は私の隣にいるこの子しかいない。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「げっ…あがぁ…やだぁ……っ!」
小娘の身体が大きく震え、膨れ上がったお腹が揺れ動く。
限界を超えた痛みに耐えながらも、必死に生きようとするその姿に目を背けたくなる。
「どうして、こんな…ひどいっ!」
心の中で何度も叫ぶ。
千代と同様にこの小娘を救う術はない。
ポンッ!!!
「がはっ!!」
最後の小娘が前のめりに倒れ込みお尻を突き上げる姿勢となった。
「ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ」
短く荒い呼吸が断続的に響く。
その声に合わせるようにお腹から血が滲み出し、じわじわと広がっていく。
夥しい量の血私の膝下まで流れ込む頃には小娘は静かになっていた。
エネマシリンジ
残ったのは私たち大人の女中のみ。
周りを見ると、どの女中も懐妊したかのようにお腹が大きく膨れている。
私も例外ではない。
「そこ!手を動かせ!!」
バシンッ!!!
ムチの乾いた音が響く。
「お許しをっ!もう本当にっ!」
バシンッ!!!
「どうかお許しをっ!」
バシンッ!!!
「ご慈悲をっ!!」
お腹が苦しくなり、ポンプを握れなくなった女中が何度もムチで打たれている。
部屋中に彼女の苦痛の叫びが響き渡っていた。
シュコッ……シュコッ……
私も余りの苦痛でポンプの操作が遅くなっている。
私だけではない。
周りの他の女中は全員ポンプの操作が遅くなっていた。
ふと千代の姿が目に入る。
まだほのかに温もりを残した彼女の身体は、自らの血の海に浸り、硬直した手はお腹を押さえたまま固まっていた。
「私は、何をしているんだろう。」
先ほどから心の中で自問自答しているがどうしてもその答えが見つからない。
千代や小娘たちを先に逝かせておきながら自分たちはまだ誰一人として逝っていない。
すぐに逝く千代に誓ったはずの私もそのうちの1人だった。
自分のポンプに目をやる。
震える手は、それを握りしめる力さえ失っていた。
もう何もできない。
そう思うたびに自分の存在そのものが意味のないものに感じる。
「もし、もしっ…」
後ろの女中が私に声をかけてきた。
「あの、よければ私のポンプを握って下さい。代わりに私はあなたのポンプを握ります。」
一瞬、彼女の提案に耳を疑った。
「そんな、でもそれっ……」
言葉が詰まる。
また他人のポンプを握る――
頭に思い浮かべた瞬間、胸が急に締め付けられた。
しかし、彼女の目には明確な覚悟が宿り冗談では無さそうだ。
「互いに入れ合えば気が紛れるとおもいます。それにこのままでは小娘達に合わせる顔がありません。」
彼女は涙ぐんだ目で伏せたまま動かない小娘たちを見つめていた。
どうやら私と同じものを心に背負っているらしい。
「わかった。」
私は小さく頷いた。
「ありがとう。」
私は振り返ると女中と対面した。
まだ若く20代前半の新人の女中。
私は震える手で彼女のポンプを握りしめた。
彼女も私と同様に震える手で私のポンプを握っている。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
不思議なことに他人のポンプだと思うと手の動きが軽い。
だが、その感覚にどこか罪悪感も湧いてくる。
相手の女中も、私のお腹にかなり早い調子で空気を送り込んでいる。
その動きには一切の遠慮がなく、膨張する圧力に内臓が押し潰され痛みが波のように襲いかかる。
私は歯を食いしばってそれに耐えるしかない。
しかし、それも最初だけだった。
「い、いや…やだ…やめてぇ……」
女中が涙声で訴える。
女中のお腹はまるでお産を控えた妊婦のような大きさになっていた。
見るからに限界に達している。
恐らくこれ以上は耐えられない。
私のお腹はまだそこまで達していないので、まだ少し余裕がある。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
私は呻く彼女を無視して最初と同じ勢いでポンプを操作し続けた。
「はぁ…はぁ…こ、こんなに…なん…て……」
予想を遥かに超える酷い苦痛。
女中は私のポンプを床に落とすと、両手でお腹を抱え前に倒れ込むように床に伏せた。
「げっ…げぇ…は…はぜ…は…っ!」
身体を大きく震わせ限界に耐えている。
膨れ上がった腹が波打つたびに彼女の表情には痛みと恐怖が浮かぶ。
悲しそうな瞳がまだ未練があるから死にたくないと私に訴えかける。
「もう…諦めて…耐えなくていいから。」
私は女中の震える身体を撫でながら少しでも苦しみが和らぐように声をかける。
しかし、彼女はかすかに首を振り最期まで抵抗する様子だ。
ボンッ!!!
「ぎぃっ!!」
大きな音を響かせ女中の身体が大きく跳ね上がった。
ピクピクと身体を痙攣させ腹部から夥しい量の血が溢れ出る。
「……っ……ぅ……っ……」
暫くしてもまだ小さく呻き声が聞こえる。
もう彼女を苦しめる理由はない。
「か、介錯を!早く!」
家臣がこちらに近づいてくる。
私は早く楽になるよう祈りながら女中の手を強く握っていた。
バシンッ!!!
「痛いっ!!」
突然、背中に走る焼けつくような激痛。
「早く手を動かせ!!」
私は家臣の勢いに押され、女中が落としたポンプを拾い上げると、再び自分に空気を入れ始めた。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
昔、武将様から聞いた話を思い出いだした。
降伏した者に介錯は許されない。
だから討ち死にをしてでも戦うんだと。
「あぁっ…ひっ…やめ…てぇっ……」
「ひっ……ひぃ……苦…しい……っ!」
「うあっ…お腹…がぁ…っ!」
他の女中たちの悲痛な声が部屋に響く。
大半の女中は私たちを真似てお互いのポンプを交換してお腹に空気を入れ合っているようだ。
ボンッ!!!
「あぎゃっ!!」
大きな音を響かせ、女中の1人がお腹を抱えて前に倒れ込むように床に伏せた。
身体を激しく痙攣させながら、床に赤い血を広げていく。
ボンッ!!!
「げぶっ!!」
また別の女中が苦しげな声を上げ前に倒れ込むように床に伏せた。
浣腸器を使った自決は切腹とは異なり、お腹の中身が剥き出しになる。
小娘ならともかく、女中は身体は大きい上に便秘や消化不良といった繊細な問題を抱えていることが多い。
少ない数人でも小娘とは比べ物にならないほど酷い悪臭がすぐに部屋に拡散される。
また家臣が居なくなることを期待したが手拭いを巻いているので望みは薄そうだ。
ボンッ!!!
「ぅぎゃっ!!」
すぐ側の女中から響く叫び声に私は反射的にそちらを振り向いた。
「はぁ、はぁ、はぁ、」
先ほどわざと小娘を苦しめていたあの女中がお腹を抱えて俯いている。
「どう?小娘の気持ち。少しは理解した?」
私はそのことがどうしても許すことが出来ず声をかけた。
「うる…さい…っ!」
女中の目が鋭く光る。
まるで反撃するかのように私を睨み続けていた。
しかし、その眼差しもそう長くは続かない。
「くっ…うぅ……」
指の隙間から夥しい量の血が溢れ出し、床に赤い花を咲かせる。
彼女は苦しそうに声を漏らしながらも、次第に顔から力が抜けていった。
鋭かった目元は穏やかに緩み、皮肉にもその顔には優しさが浮かび上がる。
「…た…すけ……」
女中のか細い声が微かに響く。
ハピネス注入!エネシリンジャー
【第四章:美代姫】
暫く私は1人で空気を入れ続けていた。
シュコッ……シュコッ……
「おいそこ!!」
「お許しくださいっ」
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
しかし、すぐに手が震えポンプが握れなくなる。
力を込めようとしても、指先が言うことを聞かない。
ボンッ!!!
「ぐえぇっ!!」
ボンッ!!!
「うがぁ!!」
ボンッ!!!
「げぼっ!!」
部屋中から大きな音と叫び声が響く。
他の女中達はお互いに空気を入れ合うことで次々と自決していく。
「はぁ、はぁ……こんな…こと……」
まだ近くに1人でポンプを操作し続ける女中がいた。
懐妊したように膨れ上がったお腹はまるで今にも子供を産み落としそうだ。
「あの、私と入れあいませんか?」
私は恐る恐る声をかけると彼女は戸惑いながら顔を上げた。
「え…あ……」
女中は10代後半くらいに見える。
すらりとした顔立ちに、幼さをわずかに残した表情が目を引く。
もしお腹が膨れ上がっていなければ、その均整の取れた背格好に男たちの視線が集まっていたことだろう。
ここまで容姿端麗なのに、何故か今まで彼女に関する噂話を聞いたことはない。
「わ…私…1人で……」
彼女は弱々しい声でそう答えるが、返事を聞き終える前に私は彼女のポンプを手から取り上げた。
「これ、私のだから。」
そう言いながら、私は無理矢理自分のポンプを彼女に押し付けた。
「早くみんなのところに向かいましょう。」
戸惑う彼女をよそに、私は彼女のポンプをいつもの勢いで握り始めた。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「ぐっ!?…うぐうぅっ……」
獣のような呻き声が彼女の口から漏れる。
その声は、若くて可憐な顔立ちからは想像できないものだった。
シュコッ……シュコッ……
一方で、彼女は私のポンプをほとんど握っていない。
いや、最初から握ろうとしていないように見える。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「が…ぁ…お父…様…ふ…不甲斐…ない…美代を…お許し…下さ…い……」
この女中――いや、美代姫っ!?
目の前にいるのはこの城を納めていた武将の一人娘である美代姫だ。
優しく聡明な美代姫は民から深く慕われ、文武両道の才を持つと聞いている。
敵が攻め入ってきた際、民を守るため自ら前線に立ち行方不明になったと聞いていたがまさか捕えられていたとは知らなかった。
そんな身分の高い彼女が、女中と勘違いされ、切腹すら許されず私の目の前で惨めな死を遂げようとしている。
そして、その状況を作り出す手伝いをしているのが、他ならぬ私自身だ。
「だ、大丈夫…わ…私…1人で……げぼぉっ!!」
美代姫がヨダレと一緒に白濁した液体を口から噴き出した。
先ほど飲まされた米糊が、胃の中から逆流してきたのだろう。
しかし、それで彼女の苦しみが和らぐわけではない。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
私が空気を送り込むたび、美代姫のお腹はじわじわとさらに膨れ上がる。
ボンッ!!!
「うぅっ!!」
ボンッ!!!
「ぎゃおぉっ!!」
ボンッ!!!
「ひぐぅっ!!」
あちこちから響く女中の悲鳴で部屋の空気が震える。
見渡せば既に7割以上の女中が自ら命を絶ち床に伏していた。
「はぁ、も、もうこれが…最期……」
「苦し…ぃ…早…く……」
「な…なんで…爆ぜない…の…っ!」
空気の入れ合いを生き残った女中たちは中々壊れないお腹を抱え、次の相手を探し不用意に苦痛を長引かせる。
彼女たちにできることは、お互いのポンプを交換し合い、今にも子供を産み落としそうなお腹をさらに膨らませることだけだった。
「ひっ…も、もう…やめてぇ…っ!」
そんな哀れな女中の一人が腹を抱えたまま上体を前のめりにして泣き叫ぶ。
もう限界が近いのだろう。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「あと…少し…我慢…して……っ!」
隣に座る女中が彼女のポンプを強引に握り続けている。
「て、天よ…ど…どうか…寛大…な…慈悲を……」
身体を震わせ弱々しい声が消えたその瞬間。
ボンッ!!!
「ぎゃああっ!!」
そのまま上体を深く前に倒し床に伏せる女中。
苦痛から解放されたその表情は、どこか穏やかさを帯びているようにも見えた。
「お、お願い…もう…終わらせて……」
「早く…もっと早く…握って……」
生き残った女中たちの哀願が嫌でも耳に入る。
さらに大きく膨れ上がったお腹は、張り詰めた水袋のように皮膚が引き裂けそうな音を微かに響かせる。
恐怖と苦痛の中、彼女たちが救われる唯一の方法はその袋を破ることだけだ。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「あっ…はぁっ、お…お腹…こんなに…大き…く……」
美代姫が背中が弓のように反らせお腹を大きく突き出した。
彼女は驚きと恐怖の入り混じった表情で、異様に膨れ上がったお腹を見つめている。
美代姫は大食いで有名だ。
実は秋の収穫祭で私と競い合ったこともある。
そのとき、彼女はワザと負け私に花を持たせてくれたのではないか?と今になって思う。
どこまでも優しい美代姫。
そんな彼女をこんな目に遭わせてしまった私は、千代のいる極楽浄土に迎えられることはないだろう。
この罪が地獄へと引きずり込むに違いない。
「い、痛い…こわ…れる…たす…けて…お父…様…っ……」
震える声で呟く美代姫の表情に絶望の色が浮かび涙が溢れている。
身体が小刻みに震わせ、武人の娘ですら耐えきれない酷い痛みが全身を蝕んでいるようだ。
「がっ…げぼっ…!」
米糊が混じった白濁液が口元からこぼれ、かつての美しい顔を汚していく。
私は美代姫の顔を袖口で拭き、汗ばんだ髪をかき上げた。
こんな状況でも、美代姫の気品と美しさは失われていない。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「た…民には…手を…だ…さない…で……」
か細い声で紡がれる美代姫の優しい言葉。
その声は、誰にも語り継がれることもなく虚空に消えていく。
ボンッ!!!
「ぐぎぃっ!!」
美代姫の身体が激しく跳ね上がる。
私は苦痛が少しでも早く消えるよう祈りながらその身体を必死に押さえつけた。
「美代姫…お願いだから落ち着いて…!」
しばらくして、震えが徐々に収まり、彼女はお腹を押さえたまま前のめりに倒れ込み、静かに他の女中と同じく静かに床に伏せた。
タイヨーエネマシリンジNEO 延長チューブ
【終章:お葉】
ボンッ!!!
「うぎゃっ!!」
ボンッ!!!
「ぐえぇっ!!」
ボンッ!!!
「いぎゃぁっ!!」
美代姫の後を追うように次々と女中の破裂音が響く。
残った女中は私を含めてあと3人。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
「げぇあぁ…と、とめっ…ああぁ…っ!」
しかも、その2人はお互いに空気を入れ合っており、もう間も無く決着が付きそうだ。
ボンッ!!!
「いやあっ!!」
残った女中は私を含めてあと2人。
「な、なぜ…お前なんじゃ…?」
「お、お葉(およう)っ!?」
最後まで残っていたのはお葉だった。
お葉は私の同輩で何でも少しだけ私の上をいく存在だった。
家事、礼儀作法、武芸どれも私はお葉に勝てたことがない。
それでも、私は彼女に負けたくない一心で必死に努力してきた。
その気持ちが今までの私を支えてきたのかもしれない。
「あぁ…千代っ…美代姫まで…っ!?お、おのれ…落ちるところまで落ちたな。」
私の周りに伏せるかつての仲間を見たお葉が軽蔑を含んだ鋭い視線で私を睨む。
言い返す言葉は何も浮かばない。
きっと、お葉が同じ立場なら潔く自ら命を絶っただろう。
私の命は、千代や美代姫の命を踏みにじったそのうえに成り立っていた。
「敵打ちじゃ!よこせっ!」
お葉の怒声に何も言わず、私は自分のポンプを差し出した。
お葉も私にポンプを差し出してきたが、私に受け取る権利はない。
決意を胸に凛とした瞳をお葉に向けた。
もう失うものは何もない。
あとはこの命を捧げ私が奪ってしまった大切な仲間の償いを果たすだけだ。
「か、覚悟せよ…せ、正義の…正義の鉄槌じゃ!」
お葉は少し動揺した様子で叫ぶと私のポンプを躊躇なく握り始めた。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
お産を迎えそうな私の大きなお腹。
もう膨らまないと思っていたそのお腹がさらに膨れ上がる。
ズキッ!!!!
「が…あ…っ!!」
お腹に走る今まで感じたことのない激痛。
まるで内側から鋭利な刃物で何度も突き刺されるような、耐え難い苦しみ。
余りの痛みに、お腹を抱えたまま前のめりになり床に伏せる。
なるほど、他の女中たちがこの姿勢になった理由がようやく分かった。
重力に引っ張られてお腹が勝手に突き出し息がとても楽になる。
ズキッ!!!!
「げぇっ…があぁっ……」
美代姫の時に聞いた、あの獣のような叫び声。
それが、今度は自分の喉奥から勝手に込み上げてくる。
私は必死に両手でお腹を押さえつけた。
もし、この手を離したらーー
内圧に押されお腹飛び出しそのまま張り裂ける。
覚悟を決めたはずなのに、この期に及んで強い恐怖が私に襲いかかる。
「どうだ?これが千代と美代姫の痛みじゃ!!」
お葉の冷たい声が耳を突き刺す。
「ふぅ…ふぅ…うぅっ……」
身体が勝手に震え始める。
千代も、美代姫も、この痛みを感じながら最後まで耐えていたのか。
私は震える手でお腹を押さえながら、思わず涙が溢れ出てきた。
自分が彼女たちに何を強いていたのか、その現実が、痛みとともに私の精神を追い詰める。
「…ご…ごめん…なさ…い……ごめん…な…ざい………」
私は泣きながら謝罪の言葉を絞り出した。
反省すれば、ここにいる誰かが慈悲をもって助けてくれるかもしれない。
そんな甘い考えが、まだ私の中でしぶとく生き残っていた。
「ふん、それは誰に対する謝罪じゃ?」
お葉の声が冷たく響く。
「美代姫か?千代か?それともワシか?……どちらにせよ、もう手遅れじゃ。早う去(い)ね。」
残された希望の欠片すら容赦なく奪い取られ、私は深い絶望に落ちていく。
「…うっ…ぅ…し…死にたく…な…ぃ…たずげ……げぇっ!!」
隠しきれなくなった本音を吐き出すと同時にに口から噴き出た白濁液が顔中に飛び散った。
涙や汗や鼻水も混ざり私の顔はぐちゃぐちゃに汚れている。
グィッ
「…う…うぅ……」
突然、髪を引っ張られ、無理やり顔を持ち上げられた。
お葉は私の逝く瞬間の顔を目に焼き付けようとしているようだ。
「もう楽になる。少し辛抱せえ。」
先ほどまでの冷たい態度とは違い、お葉の言葉はどこか優しく、袖で私の汚れた顔をそっと拭ってくれている。
その瞬間、私の心は不思議と温かくなり、穏やかな気分に包まれた。
「千代や美代姫や他の女中もお主に気遣って貰った時は同じ気分だったはずじゃ。」
お葉の優しい言葉に胸の奥にあった絶望の黒い影が少しずつ消えていく。
ギリギリギリギリギリッ!!!!!
「いがっ…ああぁっ…がああぁっ!!」
突然襲いかかるお腹が内側から無理やり引き裂かれるような酷い激痛。
「辛抱せぇ!もうひと踏ん張りじゃ!」
お葉の声が遠くで聞こえる。
勝手に跳ね上がる私の身体をお葉が必死に押さえつけてくれている。
「げあぁあぁ…っ!!(ありがとう、お葉。)」
最期にお礼を伝えたいのに喉奥から込み上げる嗚咽にかき消される。
結局私は最期まで何一つお葉に勝つことが出来ない。
ボンッ!!!
「ぐぅっ!!」
全身を激しく揺さぶる揺大きな衝撃。
私は自分の意思とは関係なく漏れ出た小さな悲鳴をあげると、ゆっくり身体から力を抜いた。
あれ、思ったより痛くない。
お腹をみると出血もしてない。
もしかして助かった!?
やった!!
まずはお葉に今までのお礼を言おう。
あっ…そうだ千代のお墓を作らないと。
千代の好きだったスミレの花で花冠をt……
や…ること…がた…くs………
どこでもエネマシリンジ
【続章:残された者】
「ぅ…うぅ…っ……」
目の前で同輩の女中が小刻みに身体を震わせ呻いている。
「全く最期の最期までワシに手間をかけさせおって。」
私はため息を付いた。
かつて技を競い合った女中の腹から溢れる鮮血がそれはそれは美しい花を咲かせている。
「お前は最期までワシより美しく生きたな。」
この女中には家事、礼儀作法、武芸どれを取っても僅差で私が勝っていた。
しかし、妹や他人を思う気遣いの心に関してはいつも私が負けていた。
「お前は、一人で多くの苦しみを背負いすぎた。すぐ極楽浄土へ行けるじゃろう。」
家臣がこちらを睨む。
どうやら最後の1人になっても慈悲など望むべくもないようだ。
同輩の女中の前に座り自らのポンプを手に取った。
シュコッシュコッ シュコッシュコッ
ボンッ!!!
「うぐっ!!」
