奴隷タンク(第3章)

<酒場用ビールタンク(以下、ビールガール)>
〇奴隷タンク自身が客の注文を聞き、体内で熟成させたビールを提供する。
 (超短距離転送魔法によって体内から直接ジョッキに注ぐことが可能)
〇接客もビールガールの仕事で、明るく愛想よく振る舞うよう求められる。
〇体内のビールは体温で炭酸ガスが気化するので時間と共にお腹の圧力が高まっていく。
 (限界を迎えないように、ビールをこまめに売り続けなければならない)

<ビール>
〇女性の体内で熟成させる特別なビール。
〇若い女性ほど人気が高い。
〇奴隷タンクの体質によって、味や香りが大きく異なる。

<破裂場>
〇お腹の限界を迎えたビールタンクが最期を迎えるための小部屋
(後処理を楽にするために設置されている)
〇場所や利用方法は酒場ごとに異なる。


<プロフィール①>
〇名前:リナ・グラセル(本作主人公)
〇体格:151cm/40kg/B77・W51・H79
〇最大容量:4.5リットル
〇役割:ビールガール


<第1章:爆花亭(ばっかてい)>

「ここは…酒場…?」

見上げると、「爆花亭」と書かれた大きな看板。
黒ずんだ梁と重厚な扉、何度も修繕された跡が残る古びた木造二階建て。
小窓からは暖かな明かり。
「ガハハ!!こいつは当たりだ美味いぞ!!」
「おい、俺にもチケットをくれ!!」
中から人々のざわめきや楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
でも、お酒の匂いに混じって鼻の奥をツンと刺す嫌な臭いも流れてきた。
この臭い…
生臭くて、排泄物と吐瀉物、それに鉄っぽさまで混ざったような…
「ひぃっ!?」
強烈な不安が全身を駆け抜けて、身体が震える。
これ…セリナのお腹が爆ぜてしまった時と同じ臭いだ…っ!!
「止まるな。歩け。」
私は奴隷商人に手を引かれて進む。
裏口の重たい扉がギィッと音を立てて開いた。
中から、お酒とあの嫌な臭いが一気に押し寄せてくる。
胸が苦しくなって、心拍数もどんどん上がっていく。
薄暗い照明の奥に、人影がひとつ動いていた。
給仕服を着た女の子。
異様に膨らんだお腹を押さえながら、ゆっくり歩いている。
「早く…売らないと…も、もうお腹がっ……」

あれってもしかして…酒場用ビールタンク!?
この臭い。
きっと間違いない。
昔、お友達だった子が「危険なお仕事」について教えてくれたことを思い出した。

“酒場用ビールタンク”
お腹を樽代わりにして、ビールをいっぱいため込むお仕事。
お客さんから注文があると、自分のお腹からビールを注いで提供する。
ちゃんと明るく愛想よく、接客もしなきゃいけない。
でも、ビールの炭酸ガスが体温で気化して、お腹の圧力はどんどん高くなっていく。
だから、限界が来る前に全部売り切らないといけない。
つまり、誰にも買ってくれなかったら……

「こんな時間に何の用だい。」
ハッとして奥を見ると、どっしりした体格の白髪のおばあさんが立っていた。
黒いローブと色褪せたエプロン、指にはごつごつした大きな指輪がいくつも光っている。
「ほう、新しい奴隷タンクか?中々かわいいじゃないか!!」
低くて豪快な声が響く。
「それに…」
ギラリと光る目で私の身体をじろじろ見つめる。
「なるほど、こりゃあ上物だね。いくらだい。」
「あっ、それはですね。この娘はなかなか…」
「こんな時間に呼び出して、大層えらくなったじゃないか!!」
「あ、いやいや、それは……」
暫くして…
私の清算が終わると奴隷商人は逃げるようにそそくさと帰ってしまった。
私はおばあさんと2人きりになる。
「今日からお前は私のもんだよ、小娘。」


<第2章:破裂場>

「いいかい、お前は今日から“ビールガール”だ。私のことはマスターと呼びな。」
ビールガール?
ここでは“酒場用ビールタンク”をそう呼ぶんだ。
「今日はもう遅い。お前に“破裂場”を任せる。そこで仕事を覚えな。」
…破裂場?
どんな場所か私も知らない。
私はマスターに連れられて店の奥へ進む。
歩くごとに、あの嫌な臭いがどんどん強くなってきて、頭がクラクラしてきた。
「ここじゃよ。」
小さな小屋。
まだ乾いていない赤黒い液体がべったりと付いた壁。
その痕は地面へ垂れ落ち、周囲には肉片や人の髪の毛が散乱していた。
なに…ここ…?
普通じゃない場所なのは、一目見てすぐ分かった。
腐ったような臭いも入り混じっていて、気分がさらに悪くなる。
「あとは任せたよ。」
そう言うと、マスターはすぐこの場を離れてしまった。
え、任せたって…何をすれば?
その時…
「はひゅっ…はひゅっ…ま、間に合った…うぅっ……」

お腹が大きく膨れあがった女の子が駆け込んできた。
見た目からして恐らくビールガールだ。
彼女は息を荒げながら、慌ただしくエプロンの紐をほどき始める。

「あ、あぁ…お、お腹…こんなに…っ……」
パンパンに膨らんだお腹。
多分、中にはビールと気化した炭酸ガスが沢山詰まっている。
そのまま下着や靴までも脱ぎ捨てて、ビールガールは素っ裸になってしまった。
「衣装…受け取って…はやく…っ!!」
私は脱いだばかりの衣装を無理やり押し付けられた。
え、これをどうしたら良いの?
「何ぼさっとしてるの!?早く中に入れて!!」
ビールガールが泣き叫ぶような声で私を怒鳴りつけた。
慌てて小屋のドアを開ける。
中には背もたれの無い丸椅子が六脚、整然と並んでいた。
そのうちの1つに彼女を誘導する。
「あ、あぁ…良かった…う゛ぅ゛っ゛……」

椅子に座ると苦しそうにお腹を抑え込んでうずくまる。
何をしたらいいのか分からない私は傍でじっと彼女を見つめていた。
「うぅ…あ、あ…んた…もしかして、新人…?」
私は小さく頷いた。
彼女は一瞬目を見開き、それからふっと力なく微笑んだ。
「ふふっ…じゃ…あ…これが、私の…う゛っ゛…さ、最期の仕事…かな……」
彼女は私にこの場所について教えてくれた。

”破裂場”
それはビールガールが破裂するためだけの場所。
破裂時に血肉が飛散するので後処理の負担を減らすのが目的だ。
ビールガールは限界が近づくと自分で破裂場に向かい最期を迎えなければならない。
ここで破裂すれば遺体は共同墓地へ埋葬される。
しかし、それ以外だと見せしめに家畜用の餌や畑の肥料にされるそうだ。

「あ、あとは…く゛っ゛!?う゛う゛う゛っ゛!!!」
彼女の声が途切れ、野太い呻き声が小屋に響いた。
お腹の表面が不規則に波打ち、中のビールがゴポゴポと音を立てている。
口からは血交じりの泡を吹き、爪でお腹を何度も搔きむしった。
「み゛な゛い゛でぇ゛っ!!出てってぇぇええ!!!」
喉を潰さんばかりの絶叫。
女性とは思えない剣幕に私は驚いて、私は急いで小屋の外へ逃げ出した。

ガリガリガリッ!!!
「い゛た゛い゛い゛た゛い゛ぃ゛っ゛!!」
扉越しに壁を爪で引っ掻く音と絶叫が響く。
最期に残った僅かな時間を、私のために使ってくれたんだ。
きっと、本当は面倒見の良い、優しい子だったんだと思う。
そう思うと、胸がぎゅっと苦しくなる。

「い゛き゛ゃ゛あ゛ぁ゛!!!」
ボンッ!!!!

鈍い破裂音。
ビチャビチャと肉片と体液が壁や床を叩く生々しい音。
そして…
目の前でお腹が引き裂けた時だけ漂う、あの独特な匂い。
「ごぷっ、ごええぇぇっ!!」
私は胃からこみ上げたものを、そのまま吐きだした。
身体が震えて動けない。
だけど…早くあの子を弔わないと。
それが私に与えられたお仕事。
私はフラフラと立ち上がり、恐る恐る破裂場の扉を開いた。

「ひゅー…ひゅー…」
静かな小屋の中、小さな呼吸音だけが響いている。
まだ生きてる…
あの子は力なく壁にもたれかかっていた。
床にはお腹から溢れ出しした腸や臓器が広がっている。
剝き出しになった肉から赤黒い液体がどろどろと流れ落ちていく。
「か゛ぁ゛…う゛ぅ゛……」
苦しそうな呻き声を出して身体を震わせてる。
その目が一瞬だけ私を睨んだあと、小屋の隅に置かれた木箱をじっと見つめた。
もしかして…
あの木箱に入れるまでが私の仕事なの?
木箱は思ったより大きくて、私たちの身体ならすっぽり収まりそう。
「…っ……っ……」
虚ろな目は天井を彷徨い、口から血混じりの泡がこぼれていく。
まだ息はある。
でも、もう、生きているとは言えない。
私は木箱を彼女の前に引き寄せて、動きが完全に止まるのを静かに待った。
「………………」
彼女の背中を押すと、ゴロンと身体が転がった。
木箱から飛び出した手足をそっと中へ収めて、蓋を閉じる。
そのまま木箱を小屋の外まで引っ張り出した。
小屋の片づけ、しないとだめだよね?
私は井戸水をたっぷり使って、小屋の中を洗い流した。
水に押し流されていくあの子の残骸を、横目で見つめながら。


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投稿者 40P

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