
奴隷タンク(第1章)
<家庭用奴隷タンク>
身体の柔らかい若い個体が多い。
各家庭に3人配属され、雨水などを体内に溜め込み、生活水を保存する。
ホースの先は3つに分岐しており3人に均等に圧力がかかる。
そのため、急な大雨の時の“安全弁”として1人だけ小柄な個体を入れておくことが多い。
<プロフィール①>
〇名前:リナ・グラセル(本作主人公)
〇体格:151cm/40kg/B77・W51・H79
〇最大容量:4.5リットル
〇役割:安全弁
<プロフィール②>
〇名前:エマ・フィールズ(マリアの姉)
〇体格:158cm/46kg/B82・W54・H83
〇最大容量:7.2リットル
〇役割:家庭用奴隷タンク
<プロフィール③>
〇名前:セリナ・ブロッサム
〇体格: 164cm/43kg/B90・W53・H80
〇最大容量: 6.9リットル
〇役割:家庭用奴隷タンク
<第2章:嵐>
ビュォォォ!!!! ザァアアアァァ!!!!(大雨の嵐)
辺りが暗くなると、空から生ぬるい水が容赦なく降り注いでいました。
水はけの悪い土壌はたちまち水に飲み込まれていきます。
そう、ご主人様が言った通り強い雨がやってきたんです。
「ふぅー、ふぅー……」

私のお腹は一瞬で満タンになってしまいました。
息をするだけでお腹が膨らんで苦しい。
「ひぃー、ひぃー、ふぅーー……」
呼吸を整えて冷静に。
薄くなったお腹の皮膚は少しの衝撃で引き裂けてしまいそうです。
少し離れたところからエマとセリナの声。
「はぁ、はぁ、も、もうお腹が…っ!?」
「エマ…力を…抜い…て…じゃ、じゃないとないと…リナが……」

2人は私の為に限界まで水を貯め込んでいます。
このままだと2人の命が……
早く…早く私が…安全弁にならなきゃ…っ!!
ドバァッ!!!
「いぎゃあああぁ!!」
突然、お隣から大きな破裂音と悲鳴が響いてきました。

驚いて振り返ると、血だまりの中で小さくうずくまる若い女性の姿。
「い、いやっ…ノエルっ!?」
お隣で安全弁をしていた私の友達ノエルです。
お腹からあふれ出した水流に弄ばれる裸体。
ご主人様によっては、安全弁がすぐ作動できるよう服を着せないこともあるんです。
その周りには、同じく奴隷タンクとして繋がれている2人の姿が。
「ノエル!!しっかりしてノエル!!」
「ご主人様!!ノエルが…ノエルが…早く!!死んでしまいます!!」
「ごぶっ、ごぼっ…い゛…だぃ゛…い゛や゛…あ゛ぁ゛……」
あんな傷じゃ、もうノエルは……
友達なのに、私はただ見ていることしかできませんでした。
「こ゛ろ゛…し゛て゛ぇ゛…く゛る゛し゛ぃ゛…っ゛!!」
呻き声が耳に焼き付いて離れません。
お願いやめて…っ!!
せめてノエルが早く楽になるように私は祈ることしか出来ません。
ミヂッ…ミヂミヂッ!!
「う゛っ゛!?」
お腹の中で何かが軋む嫌な音。
無意識にお腹に力が入っていたようです。
お腹の力を急いで抜く。
あ、だめ…
力…抜いても、中身…飛び出るぅ…っ……
凄い圧力…だ、だめっ…押さえきれないぃっ!!
ボンッ!!!
「ん゛ん゛っ゛!?」
…………あ……れ…?
まだ、私の身体…壊れ…てない。
「ひぐっあぁぁっいだいい!だずげでぇ゛ぇ゛!!」

道向かいの家から響くカレンの悲鳴。
それは私のお友達がまた1人“壊れた”音でした。
「い゛や゛っ゛!!マ゛マ゛ァ゛ッ゛!!」
そういえば……
カレンはいつも、お母さんのことを話していた。
私がここに来る前からずっと「迎えに来てくれる」って信じてた。
「マ゛マ゛…マ゛マ゛ァ……げぷ…………」
さっきまで雨の臭いだけだったのに。
血生臭い吐瀉物や排泄物の臭いがどんどん強くなっていく。
さっきまでみんな私とおしゃべりしてたのに。
今はお腹から臭くて汚いものを吐き出して、雨が全て洗い流していく。
幸せだった世界が、恵の雨でぐちゃぐちゃ。
後は私の番を待つだけ。
ミヂッ!!ミヂミヂミヂッ!!
「い゛き゛ぃ゛っ゛!?」
お、お腹…っ!?これ以上は…本当に…っ!!
だ、大丈夫、大丈夫、落ち着いて私。
深呼吸。
「はっ、はっ、はっ……」
あんまり空気吸えない。
だけど、ゆっくりと、腹腔を開いて。
お腹の力を抜いて風船を大きく膨らまるように。
ミヂミヂミヂッ!!
「い゛き゛ゃ゛あ゛!!」

怖い。
震えが止まらない。
ノエルも、カレンも…
みんな…すごく苦しんで…大きな声で叫んで……
だけど、誰ひとり自分の役目から逃げなかった。
自分の役目を果たして仲間を守った。
まるでそれが当たり前のように。
だ、だけど…何のために…?
ミヂミヂミヂッ!!
「い゛っ゛き゛き゛!!」
腰のあたりに生暖かい液体が広がっていく。
痛みよりも強く這い上がる恐怖。
これが現実、安全弁としての私の役割。
でも…でも…私は…生きたい。
たった一瞬でも、一呼吸でもいいから、まだこの世界と繋がっていたい。
死にたく、ない…私はあんな死に方…したくないっ!!
あんな最期……絶対嫌ぁ!!!
ボンッ!!!
「お゛こ゛ぉ゛っ゛!!」

…え?
セ、セリ……ナ…?
次の瞬間、お腹を締めつけていた圧力がすぅっと抜けていく。
肺いっぱいに冷たい空気が流れ込んできて、身体から力が抜ける。
でも、そんなのすぐ、酷い異臭でかき消されました。
「お゛え゛っ゛!!こ゛え゛え゛っ゛!!せ゛ぇ゛ーせ゛ぇ゛ー……」
私とエマの水がセリナのお腹から大事なモノを沢山押し流していく。
セリナは顔を歪めながら、私のほうを睨んでいました。
怖くて足が動かない。
どうしよう……
どうしたらいいかわかんないよ。
「リナ早く来て!!セ、セリナが…早く!!」
エマの叫び声。
私はフラフラとセリナに近づいていった。
鼻を突く強烈な臭いがどんどん強くなる。
「リ…ナ…リナ…ァ……」
震える声。
何か必死で伝えようとしています。
「ごぽぉっ!」
顔を寄せた瞬間、生暖かい液体が私の頬や唇に飛び散った。
「…っ……っ………」
「セリナ…! セリナっ!! 起きて、まだ逝っちゃだめ!」
私、安全弁として役目を果たせなかった。
そんな思考が頭の中で何度も渦巻いて……
だめ…力…入らない。
どんどん視界が暗くなっていく。
ドサッ(リナが倒れる音)
「リナ!? どうしてリナまで…っ…いやああぁぁぁぁっ!!」