シニシスタ SiNiSistar
「えっ、便秘……ですか?」
「はい、軽度ですが、一度出した方が良いでしょう。」
お医者様の落ち着いた声に、思わず耳を疑いました。
い、一度出す……?
その言葉を思い出すだけで全身が熱くなるのがわかります。
冷静に告げられたその一言が、どうしても頭から離れません。
「では、処置をしますので、あちらのパーテーションの裏で服を脱いで、ベッドにうつ伏せになってください。」
「えっ、ここで…出すんですか?」
驚きと恥ずかしさで、思わず声が裏返ってしまいました。
視線は宙をさまよい、どうにか冷静を装おうとするものの、顔の熱さは隠せません。
「はい、大丈夫ですよ。リラックスしてくださいね。」
お医者様の落ち着いた声に少しだけ救われつつも、羞恥心は消えません。
「わ、わかりました……」
小さく返事をすると、視線を落としたままパーテーションの裏へ向かいました。
服を脱いでベッドにうつ伏せで寝ると、心臓が早鐘を打つように高鳴っています。

「それでは装置を動かします。危険なのでお腹の力を抜いてください。」
「…はい。」
返事をする声がほんの少し震えたけれど、なんとか冷静を装うことに集中しました。
グオォォ……
機械の低い音が部屋に響き、お尻にひんやりとした感触が伝わります。
思わず息を詰めそうになりましたが、先生の言葉を思い出しそっと肩の力を抜きました。
「少し離れるので、そのままでいてください。」
静かにそう言うと、お医者様は処置室を出て行ってしまいました。
一人残された空間に、機械の音だけが微かに響いています。
シニシスタ SiNiSistar

「うぅ…苦し…い……」
思わず声が漏れましたが返事をする人はいません。
まだお医者様は戻っていませんでした。
グオォォ……
低い機械音が静かな部屋に響き続けます。
機械はまだ私のお腹に液体を注入しているようでじわじわとお腹が膨張していきます。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
お腹が重く張り詰めたような感覚に加えて鈍い痛みがじわじわと広がってきました。
「うっ…痛い……」
顔をしかめながら無意識に体に力が入ってしまいます。
痛みをなんとかやり過ごそうとするものの膨らむお腹の圧迫感がそれを許してくれません。
必死に震える息を整え、深く吸い込んでゆっくり吐き出します。
「大丈夫…落ち着いて……」
自分に言い聞かせるようにしながら少しずつお腹の力を緩めようと努めます。
痛みが引くことはないけれど少しでも和らげるようにと何度も深呼吸を繰り返しました。
シニシスタ SiNiSistar

「やだ、出ちゃう…!」
なんとかギリギリ耐えています。
グオォォ……
機械はそんな私の限界など意に介さず容赦なく液体を注入し続けます。
「も、もう無理……」
私は目を閉じお尻の力をゆっくりと抜きました。
どうにでもなれと思った瞬間消え去る羞恥心。
そう、ここは病院。
便秘の治療だから漏らしたっておかしくはない。
そう自分に言い聞かせます。
「えっ……で、出ないっ……!?」
思わず目を開けました。
お腹の中の圧迫感はさらに強まり息苦しさすら覚えます。
「な、なんで……出ないの……?」
焦りが込み上げます。
もしかして液体が全部入るまで出せないの?
想像するだけで頭が真っ白になり軽いパニックに陥りました。
「先生、早く戻ってきて…これ以上は無理…!」
心の中で叫びながらぎゅっと目を閉じます。
どう足掻いても私は我慢するしかないようです。
シニシスタ SiNiSistar

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……!」
荒い息を吐くたびお腹が圧迫され、張り裂けそうな痛みが全身を駆け巡ります。
破裂する。
本当に破裂してしまう。
内側からお腹を無理やり押し広げられ皮膚が引き裂かれそうな感覚。
「せ、先生っ……! 誰か……!」
喉が裂けるほど叫びましたが誰もやってきません。
痛みで目の前がかすみ体中から冷や汗が噴き出してきました。
身体を少しでも動かすと鋭い痛みが腹部から走り全く身動きが取れません。
「くっ……うぅっ……!」
お腹が引きちぎられるような感覚。
私は歯を食いしばって耐えるしかありませんでした。
シニシスタ SiNiSistar

今まで見たことのないほど膨れ上がったお腹。
皮膚が突っ張って破裂寸前の風船のようです。
「私……死んじゃうの……?」
恐怖と痛みが絡み合い涙が次々と溢れてきます。
絶え間なくお腹の中に液体が押し寄せ内臓が酷く圧迫される。
「やめて……お願い……!」
あまりの苦しさに喉が詰まり声が掠れてほとんど出ません。
耐えられない。
このままお腹が裂けて大事なものが全部出てしまう――。
そんな最悪の想像が頭を支配します。
「先生……先生……先生……」
必死に呼びかけても返事はありません。
無人の部屋に響くのは、自分の荒い息と、低く続く機械音だけでした。
シニシスタ SiNiSistar
ボンッ!!!
「う゛っ゛!!」

突然、身体に激しい衝撃が走りました。
お腹が酷く濡れているような感覚が広がります。
見たくない!絶対に見たくない!
目を強く瞑ったまま全身を硬直させていると、鋭い痛みが襲ってきました。
「あぁ!!あああああぁ!!」
喉が裂けるような悲鳴が、自分でも信じられないほど大きな声で飛び出します。
鉄の味が喉の奥に広がり、次の瞬間、沢山の赤い液体を吐き出しました。
「しまった!!おい、大丈夫か!?」
遠くからお医者様の慌てた声が聞こえます。
何かが崩れるように視界がぐらぐらと暗くなっていきました。
「た……ず……げ……」
掠れる声を最後に私の意識は闇に飲まれました。
後日、お医者様の必死の治療もあり、私はなんとか無事に退院することができました。
お医者様曰く、あの日は別の急患の対応に追われていて、私のことをつい失念してしまっていたのだとか。
あの恐怖と苦しさを思い出すたび、体が震えます。
もう二度と便秘なんてしたくない――心の底からそう思いました。
それからというもの、私は健康な生活を送るため、規則正しい食事と十分な水分補給を心がけるようになったのです。
