奴隷タンク(第5章)
<酒場用ビールタンク(以下、ビールガール)>
〇奴隷タンク自身が客の注文を聞き、体内で熟成させたビールを提供する。
(超短距離転送魔法によって体内から直接ジョッキに注ぐことが可能)
〇接客もビールガールの仕事で、明るく愛想よく振る舞うよう求められる。
〇体内のビールは体温で炭酸ガスが気化するので時間と共にお腹の圧力が高まっていく。
(限界を迎えないように、ビールをこまめに売り続けなければならない)
<ビール>
〇女性の体内で熟成させる特別なビール。
〇若い女性ほど人気が高い。
〇奴隷タンクの体質によって、味や香りが大きく異なる。
〇ビールガールの腹部にジョッキを押し当てると、超短距離転送魔法が発動する。
(青白い紋章が浮かび上がり、体内のビールがジョッキへ直接満たされる)
<破裂場>
〇お腹の限界を迎えたビールタンクが最期を迎えるための小部屋
(後処理を楽にするために設置されている)
〇破裂場以外で破裂した場合は埋葬されず闇市へ売却される。
(売却後に遺体がどうなろうと誰も何も言わない)
<プロフィール①>
〇名前:リナ・グラセル(本作主人公)
〇体格:151cm/40kg/B77・W51・H79
〇最大容量:4.5リットル
〇役割:ビールガール
<プロフィール②>
〇名前:フローラ・ルージュ
〇体格:155cm/48kg/B95・W52・H82
〇最大容量:5.2リットル
〇役割:ビールガール(売れっ子)
ブチッ!!
「い゛や゛ぁ゛っ゛!!ごぷっ!?」
彼女のお腹から濡れた布を裂くような音が響く。
同時に口から血を噴き出した。
給仕服に赤いシミが一気に広がる。
ブチブチブチィッ!!
「ぐぅっ…ぶぶぅっ!!」
あっ、待って!!ここじゃーーー
ボンッ!!!
「ぐぶっ!!!」

重たい破裂音が響く。
制服の布地を抜けた赤い液体が霧のように飛び散った。
鼻を刺す鉄臭さとビールの甘苦い香りが一気に押し寄せる。
スカートの裾から泡立つ赤黒い液体と肉片が流れ落ちていく。
ビチャビチャビチャ!!!
「ごぷっごぼぉっ!!!」
口から大量のビールを噴き出した。
魔法が解除されたんだ。
私の腕にしがみついていた手が、ゆっくりと力を失っていく。
支えきれず、彼女はそのまま床に崩れ落ちた。
「こぽっ…こぽぽぽっ……」
半開きの口から溢れ出たビールが床に広がっていく。
お腹が萎み、元のほっそりとした身体が現れた。
ピクピクと引きつく彼女の手を握りしめる。
せめて一人じゃないって、そう思ってもらえたらいいけど。
「………………」
これが私たちの運命。
握っていた手から温もりが静かに消えていく。
この子…
このあとどうなるんだろう?
前にマスターが言っていたことを思い出す。
ふと、マスターの言葉が頭をよぎった。
「破裂場以外で破裂したやつは闇市に売る。それが決まりだよ。」
「家畜のえさになりゃまだマシな方さ。内臓抜かれて剥製にされるやつもいるんだからね。」
ブクブクッ!!!!ブクッ!!!!
「う!?はぁ!?」

気化した炭酸がお腹を容赦なく持ち上げる。
給仕服がミシミシと軋む。
でも、破れるのはこの服じゃない。
先に破れるのは…
は、早くビールを売らないと!!
彼女を悲しむ時間はない。
もう動かない彼女を背に、私はメインホールへ急いだ

お腹を抱えたままメインホールに駆け込んだ。
むわっとした熱気と酒の匂い。
笑い声、怒鳴り声、グラスがぶつかり合う音。
近くにいた赤ら顔の男の人に声をかける。
「あ、あのっ、ビールを…!」
「わっはっはっはっ!!」
聞こえてない。
別の客に走り寄る。
「あの!ビールいかがですか!!」
「あっはっはっはっ!!」
誰も私を見てくれない。
ブクッ!!ブクブクッ!!
「うぅっ!?」

またお腹が…
早く他のお客さんに声をかけないと…私も……
テーブルの間を縫って店の奥まで進む。
ゴンッ!!
「ひぅっ!?」
椅子の背もたれにお腹がぶつかった。
衝撃が何度もお腹の中で反響する。
まるで押し潰されるような鈍い痛みを唇を噛んで耐える。
無理やり口角を上げて笑顔を作る。
ゴリッ!!
「うぐっ…!」
今度はテーブルの角がお腹に食い込んだ。
刃物を突き立てられたみたいな鋭い痛みに膝が震える。
「うっ…ううぅぅっ……」
歯を食いしばっても、みっともない嗚咽が勝手に漏れ出る。
悲しくないのに涙が頬を伝って床に落ちていく。
涙を袖で拭って、必死に笑顔を作る。

滲んだ視界の中に、一人で飲んでる老人が目に入った。
テーブルに空のジョッキがいくつも並んでいる。
目が据わっていて、とても近寄れる雰囲気じゃない。
でも選んでる余裕はない。
「あ、あの…ビールはいかがですか…?」
「…………」
ジョッキを傾けたまま、こっちを見てくれない。
もう一歩、近づく。
「お、お客様、ビールは——」
老人の目がようやくこっちを向く。
でもそれはビールに向けられた目じゃなかった。
「消えろ!!邪魔なんじゃ!!」
ドンッ!!!
「いぎゃっ!!」
老人の骨ばった拳がお腹を強く押した。
こんなの全然大したことない…はずなのに…
ボコボコボコッ!!!!
「ぐぅ!!ううぅっ!!」

お腹の中の圧力が一気に跳ね上がる。
肺が潰れて、い、息が…できない!!
「ほらしっかりなさい。」
誰かが私の背中をぽんぽんと叩く。
誰…?
「あ、リナちゃんって言ったっけ?」

「私、フローラっていうの。よろしくね。」
同じビールガールだ。
でも私と全然違う。
お腹はぺたんこ。
もう全部売り切ってる。
私なんかまだ一杯も売れてないのに。
ブクッ!!ブクブクッ!!
「ぐっ!?ううぅ!!」
ま…まずい。
額の汗がぽたぽたと床に落ちていく。
「大丈夫?顔色悪いよ。」
フローラがにやにやしながら覗き込んできた。
その視線がゆっくりと下がって、私のお腹で止まる。
「ねぇリナちゃん、酒場のルールってマスターから聞いたぁ?」
「え…?」
「そのお腹じゃもう売れないでしょ。」

「いいから。ついてきなさい。」
「うぅっ…」
フローラが私の腕を強く引く。
笑顔のまま。
(続く)
